つらいめまいに漢方の力|効果的な漢方薬を紹介

効果・効能

「ぐるぐる回る」「ふわふわする」など、つらいめまいに悩まされている方は少なくありません。西洋医学的な治療に加えて、近年では漢方薬がめまいの改善に役立つとして注目されています。この記事では、漢方の視点からめまいの原因を解説し、効果的な漢方薬をご紹介します。

漢方で考えるめまいの原因

漢方では、めまいは体内の「水(すい)」の巡りが悪くなっている状態、すなわち「水滞(すいたい)」が重要な原因の一つと考えられています。水滞とは、体内の水分代謝がうまくいかず、余分な水分が体内に溜まっている状態を指します。その他、加齢による「腎(じん)」の機能低下(腎虚)、ストレスによる「肝(かん)」の機能亢進(肝陽上亢)、体力や気力の低下(気血両虚)などもめまいの原因と考えられています。これらの漢方の考え方に基づき、漢方薬は体全体のバランスを整えることで、めまいの改善を目指します。

水滞(すいたい)タイプのめまい

雨の日や気圧の変化によってめまいが悪化する場合、体内の水分の巡りが悪くなっている、つまり水滞の可能性が高いと考えられます。むくみやすい、胃腸が弱いといった症状を伴うこともあります。これは、体内の水分バランスが崩れ、余分な水分が体内に滞留することで、内耳のリンパ液のバランスにも影響を及ぼし、めまいを引き起こすと考えられています。特に、低気圧が近づくと体内の水分代謝が滞りやすいため、気象の変化と連動してめまいが起こりやすい方は、水滞を疑ってみる必要があります。

腎虚(じんきょ)タイプのめまい

加齢や疲労によって起こりやすいめまいで、耳鳴りや腰痛、足腰の冷えなどを伴うことがあります。漢方でいう「腎」は、西洋医学でいう腎臓だけでなく、成長や老化、ホルモンバランスなどに関わる広い概念を指します。腎の機能が低下すると、体全体の機能低下につながり、めまいとして現れることがあります。特に、高齢の方や慢性的な疲労を感じている方は、腎虚が原因のめまいである可能性があります。

肝陽上亢(かんようじょうこう)タイプのめまい

ストレスやイライラによって引き起こされるめまいで、顔のほてりやイライラ、頭痛などを伴うことがあります。漢方でいう「肝」は、自律神経系や精神活動などに関わると考えられています。ストレスによって肝の機能が過剰に高まると、気の流れが乱れ、めまいやイライラ、頭痛などの症状が現れることがあります。精神的な緊張を感じやすい方や、普段からストレスを抱えている方は、このタイプに当てはまる可能性があります。

気血両虚(きけつりょうきょ)タイプのめまい

体力や気力の低下によって起こるめまいで、疲れやすい、顔色が悪い、食欲不振などを伴うことがあります。漢方でいう「気」は生命エネルギー、「血」は血液や栄養を指します。気血が不足すると、体全体に十分な栄養が行き渡らず、めまいや倦怠感などの症状が現れることがあります。体力に自信がない方や、病後などで体力が落ちている方は、気血両虚が原因のめまいである可能性があります。

めまいに効果的な漢方薬

めまいの原因となる体質(証)に合わせて漢方薬を選ぶことが非常に重要です。漢方では、体全体のバランスを整えることでめまいの改善を目指します。以下では、めまいのタイプ別に代表的な漢方薬をご紹介いたしますが、漢方薬は個々の体質や症状に合わせて選ぶ必要があるため、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談してから服用するようにしてください。自己判断での服用は避けましょう。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

苓桂朮甘湯は、漢方でいう「水滞(すいたい)」、つまり体内の余分な水分が原因で起こるめまいに用いられる代表的な漢方薬です。体内の水分バランスを整え、余分な水分を排出することで、めまいやふらつき、頭重感などを改善します。特に、雨の日や気圧の変化によってめまいが悪化する方、また、比較的体力が低下している方に適しています。めまいだけでなく、立ちくらみや動悸、息切れなどを伴う場合にも用いられることがあります。

五苓散(ごれいさん)

五苓散も、苓桂朮甘湯と同様に水滞タイプのめまいに用いられる漢方薬です。特徴的なのは、喉の渇きや吐き気、嘔吐などを伴うめまいに効果があるとされている点です。体内の水分代謝を改善し、水分の偏りを解消することで、めまいだけでなく、これらの消化器系の不快な症状も緩和します。急性のめまいの発作時など、頓服的に用いられることもあります。

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

半夏白朮天麻湯は、胃腸が弱く、足腰の冷えを伴うめまいに用いられる漢方薬です。胃腸の機能を整え、体全体のバランスを整えることで、めまいを改善します。特に、慢性的なめまいや、体力低下を伴うめまいに適しています。胃腸の不調からくるめまい、例えば、食後にめまいが起こりやすいといった方にも効果が期待できます。

その他、めまいに用いられる漢方薬

上記以外にも、体質や症状に合わせて様々な漢方薬が用いられます。例えば、加齢による機能低下(腎虚)が原因のめまいには八味地黄丸(はちみじおうがん)、ストレスやイライラによる気の流れの乱れ(肝陽上亢)が原因のめまいには釣藤散(ちょうとうさん)などが用いられることがあります。これらの漢方薬は、それぞれの体質に合わせて、不足しているものを補ったり、過剰なものを抑えたりすることで、めまいの根本的な改善を目指します。

漢方薬を選ぶ際の注意点

漢方薬は体質や症状に合わせて選ぶことが重要です。自己判断で服用せず、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談してから服用するようにしてください。漢方薬は効果が現れるまでに時間がかかる場合があります。焦らずに服用を続けることが大切です。服用中に気になる症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。妊娠中、授乳中、または他の薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。

まとめ

めまいは、西洋医学的に見れば内耳や脳の異常など様々な原因で起こりますが、漢方では体全体のバランスの乱れ、特に水分の代謝(水滞)、腎の機能低下(腎虚)、気の流れの乱れ(肝陽上亢)、体力・気力の低下(気血両虚)などが原因と考えます。漢方では、それぞれの体質(証)に合った漢方薬を選ぶことで、これらのバランスを整え、つらいめまいの緩和を目指します。西洋医学的な治療で効果を感じにくい場合や、体質改善を希望される方は、一度漢方の専門家(医師、薬剤師など)に相談してみるのも良いでしょう。この記事が、皆様のめまい改善の一助となれば幸いです。

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